インタビュー
真矢ミキさん
このドラマのお話を聞いたときの感想は?
純粋に嬉しかったです。朝の情報番組をやらせていただいてる中、いつも朝の5時からTBSへ来ているので、連続ドラマの仕事は時間的に難しいかなと思っていたので、お話をいただいたときは本当に嬉しく思いました。何よりも池井戸さんの作品ということと、チーム福澤がどんな感じなんだろうという興味もありました。
池井戸作品の魅力はどんな所にあると思われますか?
登場人物の立場はいろいろ違えど、まずは人間らしさだと思います。『下町ロケット』の原作も読ませていただきましたが、登場人物のみなさんが夢を追って頑張って切磋琢磨して、開発したい、とかイノベーション起こしたいという気持ち、いろいろと考えている想いは一緒なのに、「なぜ人は人を蹴落として上っていくのか?」というような所が泥臭く人間臭く描かれていると思いました。
台本を読まれた感想というと?
ドラマの世界観から入りたいと思いながら、自分の役も含めて俯瞰で読んでいますが、今以上に良いものを目指して上がっていくということは大変なことなんだなと、あらためて思いました。大なり小なり、普通に女性でも友人関係でもあるところだと思いますが、淘汰するまでにふるいにかけられるような人生の中で、その試練に耐えられたからこそ見ることのできる世界みたいな…。
そんな中でも、低いところで見える景色もあると思っていて、そういった社会でもその虚構のスケールの大きさや厳しさというのを、読んでいてすごく感じました。最終的に勝ち負けではないと思いますが、やはり生き残っていくのは、目の前の事を地道にやってきた人なのかなと思っていて、読んでいて勉強になります。
登場する女性に共感できる部分というと?
まずは、主に男性社会へスポットを当てている作品なので、女性のかかわり方というか登場の描かれ方というのが刹那的だったりエッセンス的に描かれているような気がしています。でも、だからこそ私の役でも実家のお母様の役でも私の娘の役でも、また佃さんと娘の関係性でもそうだと思いますが、何か男性に気付かせるような存在として、女性の良いところ、魅力というのが、このドラマには凝縮されているように感じています。
そんなことを考えながら、根っから優しいのではなく、いろんなことを踏まえた上で優しくなれるという部分には共感できますし、自分が演じる沙耶さんも、そのような女性として見ていただけるよう演じられたらと思います。
特に、沙耶さんは佃さんと離婚してしまっているので、別れてしまったけど、それまで長年夫婦としてやってきたからこそ、離れていても佃さんや娘のことを気にかけているでしょうし、そんな沙耶さんの気持ちを表現できればいいなと考えています。
ご自身の夢というと?
私が学生の頃の時代的なこともありますけど、ごく普通にお嫁さんになりたかったですね。あの当時の普通がどういった概念なのか、うまく言えませんけど、普通にお嫁さんになりたいと思っていましたし、家庭的な事柄に憧れていました。
宝塚へ入団したのは、流れに任せていたというか、引き寄せられたと言ってもいいかもしれません。そういうことってあるじゃないですか。自分から強く望んでいたわけではないけど、なんとなく流れに乗って漂流していたら、「あれ? えらい島についたぞ!」みたいな(笑)。
入団してからは、「この劇団は何を魅力として、お客さんは何を見に来ているのかな?」といった感じに俯瞰で考えられたので、ちょっと研究員みたいな感じだったかもしれません。でも、無防備すぎたといいますか、歌劇や芸術に関する勉強や習い事など何もしていませんでしたし、その素養があったわけでもなく、入団してからいろんなことが波のように押し寄せてきました。学校の勉強はすごくしていましたし、頑張ってやるだけ結果がついて回ると思っていましたが、こと芸術の世界は才能がないと努力をしてもダメなんだなと感じてしまい、18歳のときに辞めようかと考えたことがありました。
18歳のときに、母親に電話して辞めてもいいか切り出しましたが、いろいろとありまして、あと1年ぐらいは頑張りなさいと説得されたんです。自分で踏ん張ったというより、母親や家族へのバツの悪さみたいなところで続けていたところ、新人公演で主役をいただきました。
私、良くも悪くもすごく吉凶運が激しいようで、人より良い事も起きるけど、それとは反対に人よりもすごい目にも合うみたいな感じなんです。
そんなこともあって、地道さというのはすごく大切なことだと思っています。地道とか丁寧さとか、本当にコツコツ、本当に地道に目の前の事をこなしてきた人、ずっと頑張ってきた人にはスッと道筋ができる、そんな気がしてなりません。
宝塚に入ってからの人生の前半は男として育ってきたというか、男役として男性の研究ばかりしてきたので、自分で言うのも変な話ですが、年齢の割には女性のことをよくわかっていないんです。一般的に、これくらいの年齢の女性だったらこういった生き方をしていてこんな感じ…という姿があると思うのだけど、それがよくわからないところがあるので、女性の生き方というか女性そのものに対していまだに発見があって、それがおもしろくもありますし、女性としての喜びも感じています。
このドラマにかける想いというと?
この物語の中で重要なポイントとなっているのが、(ロケットのエンジンを制御する)バルブシステムというものなんですけど、このパーツに関して登場人物が一喜一憂するというか、人生をかけているところがありまして、そのモチーフに絡めるわけではありませんが、ロケットのパーツも私たち役者も、それぞれ良いもの良い作品を作るためには良いパーツとして存在しなければなりませんし、パーツとして地道に頑張ることで、ドラマを観てくださるみなさんに楽しんでもらえるものができると思います。
『下町ロケット』という作品に集まった役者とスタッフと、みんなの頑張りが一つになって、大きなロケットを飛ばせるのかなとイメージしているので、自分も質の良いパーツの一つとして存在できるよう頑張りたいと思います。